対人援助職の燃え尽き症候群

燃え尽きて行く 対人援助職のストレスにまつわること

さて、今日は燃え尽き症候群に関連することを書いてみたいと思います。 この言葉をご存知でしょうか。いつから使われているのかは調べてみないことにはわかりませんが、心理学など学び始めるとどこかのタイミングで出会う言葉です。 また対人援助職の間ではよく知られる言葉ですので、看護やリハビリを学ぶ過程で出会う方もいるのだと思います。

燃え尽き症候群とは

人は何か一つのことに、大きくエネルギーや労力を割いて取り組むこともあることでしょう。そして、非常に意欲的に活動を続けることもあります。 しかし、そのような人が突然に無気力になって、それまでのような取り組みを続けられなくなってしまうことがあります。

これを幅広い意味で燃え尽き症候群と言うのだそうです。(英語では、バーンアウト) 元々は、病院の看護師さんやケースワーカーの方がこのような状態にあることを見た、アメリカの精神分析医である、ハーバート・フロイデンバーガー(Herbert J. Freudenberger)が名づけたそうです。バーンアウト症候群は1974年に初めて学術論文で取り上げられました。

しかし、これは何も医療現場においてのみ起こることではないように思えます。 例えば受験や就活、子育てなど色々な場面で燃え尽き症候群があっても不思議ではないと思います。それほどに一生懸命に物事に取り組んでいる方が多いはずです。 つまりエネルギーを注ぎ込んでいる対象があるならばという事ではないかと思います。

 

ICD-11に収載された

燃え尽き症候群は、概念としては広く浸透していましたが、精神科領域の診断名としては、これまで収載はされていませんでした。古い精神医学書の索引をあたると、この用語は掲載そのものがありませんでした。 ICD-11が発刊された今後はどういう扱いになるのかと調べてみる必要があります。(※ICDとはかの有名なWHOが発行する疾病分類です。)

職場でのことであり、現象として捉えており疾患・障害という扱いではないように見て取れますが、いかがなのでしょう。長崎新聞の健康コラムに医師の解説がありました。

 

対人援助職の燃え尽き症候群

頑張るナース

※フィクションです ある対人援助職Aさんの物語

Aさんは30歳になり、院長から大きな新規プロジェクトの話があることを知らされました。これまでの働きぶりからしてAさんがこの件にもっとも適しているのだそうで、多くの事を任せたいとのことでした。 院長の中では、最近会った別病院の知人がうまくやっているのを見て、うちの病院でも行けそうだと思い、すぐに実行したかったそうです。

Aさんの猛烈な努力

Aさんは、大役を任されたためか、非常に舞い上がり残業の日々を送りました。 しかも、かなり無茶な働き方をしているにもかかわらず、まるで疲れた様子がありません。 人間というのは乗っている時は、疲れもなんのそのなのでしょうか。

そして、充実感に溢れかえっているように見えました。この企画が成功すれば、多くの職員にとってもっと健康に、働きやすい職場になる事が想像できたのです。皆のためにも頑張ろうと思っていたのでした。

誰よりも早く朝7時には出勤して、23時まで働く生活が3ヵ月続きました。

残業の総時間は、500時間にも及びました。

ある日、急に院長から企画の中止が言い渡されました。 知人が、大きな失敗をしたと知ったためでした。 Aさんは既に120%の準備を終えており、これでもかというほどに企画を練り込んでいました。

「せっかくここまで準備したのですから・・・」と院長に食らい付きますが、なぜか弱気になっており、中止の考えしかありませんでした。 一体Aさんはなんのために頑張ってきたのでしょう。 一気に力が抜けていくAさんだったのでした。燃え尽きてしまったのでしょうか。

なんだかもう働けない・・・

無気力状態

糸が切れたようにAさんは、意欲を失くしてしまったのです。あんなに張り切ってバリバリと働いていた姿が見る影もありません。

病院にも出勤せず、自宅でボーっとしているのでした・・・。

振り回される事

Aさんのように、大きな意志に振り回された経験を持つ方は多い事でしょう。 はじめは乗り気だった人が、後になって態度を変え始めるのです。 まじめに考えていた人にとって打撃は大きすぎるものとなります。

どうせ社長の思い付きだろう・・・とはなから適当に取り組んでいたらこれほどまでのショックにはならなかったはずです。 真剣に取り組む人ほど、ダメージが大きいなんて益々やり切れません。

燃え尽きを防ぐには

さて、このような燃え尽き症候群を防ぐために何かできることがあるのでしょうか。

月並みな所にはなりますが、幾つか触れておきたいと思います。

対人援助の現場は24時間回転しているため、メンテナンスの時間を設ける

例えば病院では、勤務時間が来たからといって、入院患者が帰宅するわけではありません。つまりは夜勤スタッフがいるのです。これは交代制でまわってくるものです。

とにかくずーっと現場はまわり続けているのです。

そこで、時々でもメンテナンスを入れるのはどうでしょうか。対人援助職に生産工場の理屈を導入するのはナンセンスと思われるかもしれませんが、ずーっと稼働している機器は、時には油を差したりするものです。そうでないと稼働率は落ち、その内に動かなくなってしまうのです。

仲間の支えがあることを思い出す

ペアリラクセーションもそうですが、仲間がいるのではないでしょうか。

もちろん仲間は時に敵と化すようなこともあるわけですが・・・しかし頼りになる仲間なのであれば、それは貴重な存在です。一匹狼ではとても務まらない仕事なのだと思うところです。

現場は白熱しているかもしれませんが、安全性はスタッフ同士にも応用されたい概念です。

また、師匠のような尊敬できる存在に時間を作ってもらうことも一つでしょう。

 

まとめ

対人援助職には、人のために猛烈に頑張ろうとする人が数多くいるものです。そういう人だからこそ対人援助職になったのです。(そうでない人に素質がないという話ではなりません)

対人援助職は、援助を継続するためにやはり倒れるわけにはいきません。だからこそ、対人援助職のストレスケアも重要だと思うわけです。

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